本年11月に開催されるLCA(Life Cycle Assessment)学会の国際会議エコバランス2010に向けて、環境政策に関する論文を執筆しています。
気候変動、地球温暖化に対応して、低炭素社会づくりが進められているところですが、CO2削減に過度に傾斜した考え方は問題ではないか。環境政策の根本、守るべき価値は、人間もその一員である自然そのもの、すなわち生物多様性であり生態系であるということを訴えています。以下、論文の一部
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低炭素社会から自然共生社会へ
地球環境問題を議論する際に、よりどころとなる確かな概念枠組みは何か。先に述べたように気候変動という概念はそれ自体は最終的な目的とはなりえない。また、気候変動から導かれる低炭素社会という社会コンセプトにもおのずと限界がある。
そこで、気候変動のより上位に位置する自然環境を規定する概念として、生物多様性を位置づけたい。生物多様性の概念は、そもそも人類の生存のもっとも基本的な条件となるものであり、保全の最終目的になりえるものである。また、科学的な見地から、さらに、人類共通の感覚としてその意味、重要性が認識されうるものであるという特徴がある。
生物多様性は人間を客観的にとらえる視座を与えるものとしても意味がある。すなわち、人間も生態系の一員に過ぎず、生態系に支えられ始めて存在できるという事実を的確に示す概念として重要である。人類共通の行動指針となりえるものである。
生物多様性の概念を基本に社会の方向性を論じる時、低炭素社会から自然共生社会への発展の道筋が見えてくる。生物多様性を保全し維持するためには、人類は自然との共生を実現する必要がある。低炭素社会の実現は、自然共生社会の実現に内包されるものであり、必要条件といえる。
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